またみんなに集合をかけて集まることになった。
「ねぇねぇここにね……」
カレンと理央が棚の中をきゃいきゃい言いながらごそごそして。「おう! これいいですねぇ」
大野君がCDを漁り。「ごめんなさぁ~い コップとってもらえるかなァ」
「はい、響子さん」 伊織と響子が人数分の飲み物を注ぎ分けている。 俺はというと、パソコンの前んで椅子に座りカチカチと調べ物をしていた。そう集まった場所は何故か俺の部屋だ。
前回の女の子2人は都合がつかず、1人は後で合流することになっている。 で、このメンバーだけがそろったわけだけど……。「お前らいい加減にしろ!!」
「「「はぁい」」」 振り向いた俺が一喝する。 立っていた人は空いてるところに腰を下ろし、座っていた人は俺に視線を向けた。「みんな、頼んでたものはどうだったかな?」
「話は聞いて来てるよ」「こっちも大丈夫よぉ」「藤堂さんも、僕も頑張ってきました」「わかった。俺も話を聞いてきたよ。これから何をするのかは、皆の話を聞いた後に説明するよ」 部屋の中でみんながうなずいた。 それから1時間後。俺達はこのことの始まりの学校に来ていた。普段はなかなかこういう自分の学校と違うところには入れないのだが、事前に皆川さんと新井さんに頼んで許可を取ってもらっていた。そしてその二人も今は合流している。
俺達はその教室で一人を待っていた。
「ごめんなさい。遅くなっちゃいました」
息を切らせながら入ってきたのは今回の相談者の内島さんだ。「大丈夫だよ。後は君だけだったから。じゃぁちょっと準備するね」
教室にいたみんなでカーテンを閉めて暗くしたり、教室の電気を消したりと手際よく進めていく。「あ、あの……。これは?」
「掃除は自分でしろよ」「ああ、すまん」「やっぱり惚れたのか」「……」 次の現場に移動する車中で思わぬ銃撃を受けた俺の心は内心バクバクいっていた。「まだわからん……だからノーコメントだ」「なに? 好きなんだろ? 柏木さんの事」「す、好きは好きだが……」「あぁ……そういう事か。まぁお前らしいけどな」 その会話の後は二人に沈黙が下りた。 そう俺の心の中には確かに「柏木さん」が大きく存在していることは確かなんだ。 だけどまだ大きく存在する女性もいる亡くなった妻だ。そしてまだ幼い息子もいる。そんな俺が軽々しく恋してるなんて言ってもいいのだろうか。考えても答えが出ないまま毎日が過ぎて行く。 柏木さんは娘の伊織ちゃんを連れて何度か遊びに来てくれてる。俺の足の事を心配してくれてるのと、息子真司を娘さんの友達として認めてくれたから。同じチカラのある者同士だから側にいさせてあげたいという親心だ。自分の部屋に通ってくれる女性。勘違いしないようにするのはとても簡単な事じゃない。 何気ない生活をしていても日々は進む。同時に捜査も進んでいた。この日も相棒と共に事件の関係者と思われる者たちを追っていた。「いた!! あいつだ!!」「おう。静かに後を追ってくれ。見つかるなよ!!」「任せておけって!!」 前を歩く人影を静かに車で追っていく。 例の件を捜査している俺と村上は、霊がまた真司にコンタクトしてきた時にもう少し詳しく聞いといてくれと頼み、この辺りの事を話してくれたと嫌な顔をしながら真司が聞き出してくれた。 霊と仲良く話すってのも何か変な感じだけど、真司が話す|モ《・》|ノ《・》|達《・》に関しての事は絶対的に信頼している。それに今回は伊織ちゃんまでもがそう言ってると[|唯《ゆい》]さんも言っていたし。 追い続ける事五分。人影をつけた道の先には小さな工場跡が
ちゅんちゅんちゅん トントントン……。 その日の朝はいつものスズメの話声と共に聞きなれない物音で目を覚ました。最近では全然聞く事の無くなった音だ。起きて少し動いてみたが体のあちこちが痛む。 昨日の夜遅くまで話し込んでしまった俺と柏木医師はそのまま寝てしまったようだ。隣の部屋をのぞくと子供たち二人は、仲良く寝息を立ててまだ眠っている。そのままキッチンへつながるガラス戸を開ける。 昨日真司が渡したエプロン姿の柏木医師が、はなうた交じりに機嫌よく忙しそうに立っていた。「す、すいません。お客さんにしてもらうなんて!!」 声をかけるのと同時位に柏木医師が振り返る。「あら、お目覚めですか? おはようございます。大丈夫ですよ、慣れてますから」「あ、いあや、慣れてるとかそういう問題じゃなくてですね」「じゃぁどういう問題なんです?」 ニコッと俺に向けられた笑顔は、ホントに疑問に思っていない素直なものだと分かった。 ここは、医師《せんせい》の行動にお任せした方がいいだろう。今の俺では文字通り足手まといになるだけだから。ようやくそこまで考えが行きついたときにふと気づいた。「おはようございます。ではお願いします」「はい、お願いされました」 またはなうたを交えながら調理に戻る姿を後ろからぼんやりと少しながめていた。「ところで藤堂さん」「は、はい!!」 朝食を囲んでゆったりしていた俺に、思い出したように声を掛ける医師《せんせい》。 俺もビクッしてしまう。あんまり女性に声かけられることが少ないから。特に最近はいつも隣に村上というナンパ師がいるし……違う!! 相棒がいるし。「今日もご出勤なさるおつもりですか?」「え!? ええ、まぁそのつもりですが」「医師としてはあまりお勧めできませんが……。娘の……伊織の為にもその事件解決して欲しいという複雑な思いで今私は座っています」
数時間後とある街のとある一室の前。 ピンポーン……。 ガチャ「いらっしゃい」「すいません。来てしまいました」 ドアが開かれた時、目の前に立っていたのは小さい女の子だった。その後にメガネをかけた女性が立っていた。さすがにあって間もない女性宅に行くことに戸惑い、自分から言っていい物か悩んだ挙句、そういえば移動手段が無いと結論付けてお断りの連絡をすると、意外にも彼女の方から来ると言われた。少しの間押し問答が電話越しに行われたが、結局俺たちの住むアパートまで来ていただくことで決着した。――決して美人に弱いわけではないぞ!! 多分……。そして今に至る。「い、いえ、どうぞ。散らかっててすいません」「いえいえ、お構いなく」 何度かそのような会話が玄関先で繰り返された。「父さん、早く入ってもらいなよ」「え!? あ、そうだな、うん。し、失礼しました。どうぞ」 息子に突っ込まれて我に返り、足を引きずりながら部屋の中に招き入れた。「あの、藤堂さん。座っていてくださって大丈夫ですよ。押しかけてきてしまったのは私の方なんですから」「すいません。まだ越してきて荷物もそのままってとこもありますが、どうぞ。伊織ちゃんだっけ、こいつは真司って言うんだ。仲良くしてやってね」「……」昼間会った時とは違い、娘の方は無反応だった。「す、すいません。そんなに人見知りする子じゃないんですけど」「ああ、気にしなくていいですよ、お昼はちゃんとお話ししましたから」 おもむろに持っていた大きい袋から「お土産です」と言って、結構な個数のタッパ~に入ったおかずなどを渡してくれた。「柏木さん、これは?」「あ、あの、藤堂さんの足がその状態では大変だと思いまして、差し出がましいかとは思いましたが、作ってきました」「え、良いんですか? ありがとうございます。助か
「藤堂さん」「はい」「全治1か月ですね」「はい!?」 レントゲンの結果を見ながら柏木医師《かしわぎせんせい》はこちらを見ずにあっさりとそう言い切った。「どうしますか?」「と、いいますと?」「ええ、骨折の場合固定するためにギプスをするのが通常ですが、藤堂さんは刑事さんのようなので、なるべく動ける方がいいのかと思いまして」 感心した。この医師《せんせい》はちゃんと患者に向き合いながら、患者の利益を考えて治療計画をしてくれる。初めに少し疑ってしまった自分が恥ずかしくなる。「ご配慮ありがとうございます。何か方法はありますか?」「そうですねぇ……。その折れてる部分的に固めるぐらいしかできないと思いますが……あとは長い時間移動するときの補助に松葉杖を使うくらいでしょうか」「立ったりはできるんですよね? 」「できるとは思いますけど痛いですよ?」「息子に飯《めし》を作ってやらないといけないんで、台所に立つくらいの時間我慢できればいいんです」――何だろう。そう言った途端に医師《せんせい》がじぃ~っと俺を見ているような……。うんよく見るとこの女性《ひと》綺麗なだなぁ……。っと、いかんいかん。へんな気を持ってはアイツと同類だ。それだけは避けねば。「えと、失礼ですが……藤堂さんはお一人でお子様を育てていらっしゃるんですか?」「え? ええ、そうですネ。たまに両親に見てもらってますがね」「ああ、そうですか。ではウチと一緒ですねぇ」ニコッと笑顔をみせた。――あれ? この顔どこかで見たような……。俺と話しながらも医師《せんせい》の手は休むことなく動き、俺の足に固定具を巻き付けていく。「そういえば、ここに来る前に老夫婦に連れられたウチの息子くらいの娘《こ》に会いましてね」「へぇ~
「あぁっと、申し訳ありませんが少しお話を伺えませんか?」「な、なんだてめぇは!!」 突然その二人組に声をかけた俺を相棒はビックリしていたが、この男の返事にピンと来たのか瞬時に対応した。「あ、私らこういうモノで、怪しいモノじゃないんですが事件の捜査をしてまして聞き込みを行っているんですよ。少しのお時間でいいのでご協力願えませんか?」 こういう時の村上は意外と素早くて頼もしい相棒だ。「るせぇよ! 時間なんてねぇよ!!」 と、聞いてる時だった。 ダッ「あ、くそ! 逃げやがった!」 もう一人の男が突然走り出したのだ。これはドラマでもよくあるパターンで俺達もその辺は分かっている。「俺が追うから後よろしく」「おう! 後でな!」 俺はすぐに追いかけ始めた。「くっ! この! 足早いなお前!!」「なめんじゃねぇぞ、つかまってなんかやんねぇからな!!」 まだ捕まえられずに追いかけていた。 男は目の前の金網フェンスを乗り越え更に走りだそうとしていた。「ま、待てこら!!」 ドスッ フェンスを越えて着地した地面から悲鳴にも似た音が上がる。ようやく乗り越えた俺はまた走り出した。男は先の路地を右に曲がる。重い体をようやくと使いながら俺も角を曲がろうとした時。 ドゴッ「あ、ぐわぁ!!」 先に曲がったはずの男がまだいて、手には鉄パイプのようなものを持っている。どうやら俺は注意が足りなかったらしい。まんんまとその鉄パイプによって足を殴られていた。「ばぁ~か!!」「く、この!!」 男はその場から走り去ってしまった。 ようやく自分たちが停めておいた車を運転して村上がやってきたころには、男はとっくに消えていた。最初の男は応援の仲間に任せてきたらしい。「す、すまん。迂闊《うかつ》だった」「なぁ藤堂、悪いことばかりじゃねぇぞ。お前の話によると鉄パイプで殴られたんだろ? ここに
「どうした?」「ううん、何でもないけど、お父さん探してくれるんでしょ?」「あ、ああ、まぁそのつもりだけど」「じゃあ僕、少しは役にたてたかな」 ああ、言いたいことは分かった。妻の残した言葉をこの子はこの子なりに守ろうとしているのだと。「そうだな。また聞くかもしれないから、今度はもう少し聞いといてくれるか?」「う~~ん、頑張ってみるよ」――すごく嫌な顔してたな。 ちょっと無理させすぎかもしれないな。子供なんだから怖くて当たり前だ。慣れるはずない。いくら小さい時から見慣れているからって……。そいつはもう生きていないかもしれないんだからな。 息子から話を聞いたその日のうちに、現場に出ている同僚に電話して近いところでの行方不明事件や捜索願が出ていないか等の情報を、一通り洗ってもらうようにお願いしておいた。 俺にはこの話が事件だと確信している。親バカとか周りには言われるだろうけど、俺は息子の言う事は信用している。特にこういう事をクチにするときの真司は、子供特有の妄想《もうそう》やウソをついたことが無い。それどころか以前にもこのチカラのおかげで、解決した事件もあるのだ。 休日が明けた次の日から、任されている事件とは別に相棒と二人で、息子の言う件も並行して調べることにした。 今は相棒と共に車に乗って移動中。この相棒も俺と一緒に前の警察署から異動になって、さらにまた同じ部署で相棒になっているという、腐れ縁的な相手の|村上良一《むらかみりょういち》なので、気兼ねすることなく進めることができる。何よりこいつは真司の言うことを信じてくれている、俺以外では今は唯一の存在だ。「おい慎吾、今追ってるこの件はもらった手元の資料には無いみたいだが何だ?」「ああ、お前には悪いが息子絡みだ」「そんなことだとは思ったぜ。今回はなんて言ってるんだ?」「今回のソイツは自分を探して欲しいらしい」「事件か?」「たぶんな……」 それだけの会話だが通